空集合日記

何でもない日の日記と独りごと

2023-07-19 少し前の日記

お昼過ぎに、妻のパスポートの氏名を変更するため新宿のパスポートセンターに行った。代理人申請なのでスムーズに行くかどうかドキドキしていたが、通常の申請から追加で必要なものは書類1枚、戸籍謄本、身分証明書くらいで比較的簡単だった。

(そもそも論として、氏名のみの変更で通常の申請と同じ手続きが要求されるのは負荷が大きいのでは、という説はあるかもしれない。)

 

平日の日中だったが夏休み前ということもありそれなりの混み具合だった。書類を提出し番号札を貰うまでの列が30分くらい、番号札を貰ってから呼ばれるまで1時間〜2時間くらい。

番号札を貰ってからは、スマホで混雑状況をリアルタイムに確認できたので、近くの図書館で本を返却したりスタバで時間を潰したりした。

 

図書館は今年の年始くらいから足繁く通っていて、ビジネス関連の本からデータサイエンス、物理の本まで興味の赴くままに色々借りている。地域によるとは思うが、SNSAmazonレビューで評価の高い書籍も意外と待ち無しで借りられるので、さくっと読むのに丁度良い。必ず期日までに返さなければならないということも、頑張って読まなければという後押しになっている。

 

無事にパスポート申請が終わった後はもう少し数学の本を物色したくなって紀伊国屋書店に行った。6階で本を見ていたら、突然館内放送が流れてきた。

「たった今、第169回芥川賞が、市川沙央さんの『ハンチバック』に…」

ちょうど芥川賞の受賞作が決まったらしい。なんとなくお祭りみたいな気分を味わえた。本を数冊買って階段を下りると、2階に特設コーナーが出来ていてTVカメラが入っていて少し賑わっていた。楽しそうな雰囲気を後にして家に帰った。

 

小説はあまり読まないのだが(毛嫌いしているわけではないがなんとなく趣味の中での優先順位が低い)、上記のこともあり芥川賞のことが少し気になったので家に着いてから調べてみた。

重度障害者の女性が主人公の作品で、作者も重度障害の女性ということで、さらにもう少しだけ興味が湧いた。

 

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私の2番目の兄は重度の自閉症で行動障害がある。会話の流れで誰かにこのことを話す時に自分としては相手にどう思って欲しいとかこういう言葉を掛けて欲しいというのは全く無いのだが、実際のところ、兄のことを聞いた相手はどう思っているんだろう、というのはたまに気になることがある。

つまり、自分にとって生まれた時から障害というものが身近すぎて、かつきょうだい児か否かという分け方で言えば統計的には少数派であることは事実なので、そうでない人の「障害」との間の距離の“平均値”(あるいは”期待値“)がどれくらいなのかを想像するのが難しい。例えば朝食がパンの人の割合を推定するような問題よりは遥かに手がかりがない。

身近に障害者がいなくても私より障害や福祉について何倍も詳しい人は沢山いるし、逆にたとえば何らかの選抜試験を通過して(その合格者たる)自身と似たような境遇の人たちだけと共に時間を過ごしてきた、みたいな生い立ちで、障害について何も知らない人もいるのかもしれない。友達とそういう話をする機会もほとんど無いのでずっと分からないままだ。何としてでもそういう話をしたいのかと問われると別にそこまでではないのだが、自閉症一つ取っても、あるあるトークとか幼少期のエピソードとかそれなりにはあるので、遠慮なく突っ込んできてもらっても何らかの話はできるはずとは思っている。

 

「自分としては相手にどう思って欲しいとかこういう言葉を掛けて欲しいというのは全く無い」と書いたが、強いていえば「自然体でいてほしい」と思っている。「障害者が自ら表現する実例が少ない」と芥川賞を取った方が言われていたそうだが、障害者の表現や目線が誇張や歪みのない形でたくさん社会にあらわれることが、「自然体」でいることを促すための良い材料になるのかなと思った。同時に、言葉で意見することが難しい人の思いをどう表現するのか、という問題も生じるけど。